秋田大学理工学研究科河野研究室では、「光」、「ナノ構造」をキーワードに、蛍光体材料に関する基礎・応用研究を行っています。特に、材料化学を基盤として以下の研究テーマを柱にしております。
・シンチレータに関する研究
・新規電子励起状態の探索と応用
秋田大学理工学研究科河野研究室では、「光」、「ナノ構造」をキーワードに、蛍光体材料に関する基礎・応用研究を行っています。特に、材料化学を基盤として以下の研究テーマを柱にしております。
・シンチレータに関する研究
・新規電子励起状態の探索と応用
シンチレータに関する研究
シンチレータとは高エネルギーの放射線を、低エネルギーな紫外光や可視光に変換する材
料で、高エネルギー物理や医療(PET、X線CT等)、石油探索、セキュリティ(空港の手荷
物検査等)など様々な分野で用いられています。
シンチレータに求められる特性は、用途に応じて変わりますが、主に以下の特性を考慮する
必要があります。
① 大きな発光量
② 蛍光の減衰が早い
③ 放射線阻止能が高い
④ 低コスト
⑤ エネルギー分解能が高い
⑥ 結晶の均一性が高い
⑦ 潮解性がない
河野研究室では、それぞれの用途に応じて酸化物、フッ化物、有機物、有機無機ハイブリッドなど様々な材料を作製し、特性評価を行っております。
その中でも現在、特に注力しているのが量子ナノ構造を形成する有機無機ペロブスカイト型化合物です。
この材料は、無機ナノメートルサイズの半導体無機層に励起子と呼ばれる励起状態が形成します。この励起子は、量子ナノ構造の閉じ込められることで、高強度で高速な発光を示すことが報告されております。これまでの研究で、材料の構造・組成の最適化により、ガンマ線照射下において有機無機ハイブリッド材料の中で世界最大の発光量(14000 photons/MeV, 8 ns)を実現しました。(N. Kawano et al., Sci. Rep. 7 (2017) 14754)河野研究室では、有機無機ハイブリッド材料のさらなる特性改善を行い、陽電子放射断層撮影(PET)装置や、放射光施設などでの応用を目指します。
新規電子励起状態の探索と応用に関する研究
シンチレータなどの光機能性材料を開発するためには、それぞれの用途に応じた光学特性を実現する必要があります。河野研究室では、応用を視野に入れた新規電子励起状態の探索や電子励起状態の制御に関する研究を行っております。
その中の一例がハイブリッド励起子に関する研究です。励起子とは、電子と正孔が一体運動をする励起状態の一種です。励起子は、ワニエ励起子(主に半導体に形成)やフレンケル励起子(主にπ共役系分子に形成)など様々モデルが提唱されております。このワニエ励起子とフレンケル励起子が共鳴状態を形成することで、大きな光学非線形性を示すことが予見されています。
これまでの研究で、ワニエ励起子とフレンケル励起子のエネルギー準位を一致させることで、ハイブリッド励起子の実現を示唆する発光を観測しました。河野研究室では、ハイブリッド励起子に関する研究を推進すると共に、電子励起状態制御に関する様々なテーマに挑戦していきます。